- 「テンパリングをしたのにツヤが出ない…」
- 「テンパリングをしてもいつまでも固まらない…」
- 「チョコレートのコーティングが分厚くなってしまう…」
チョコレートを手作りする際、こんな経験をしたことはありませんか?
テンパリングは、チョコレートの質感や食感を決める重要な工程です。
しかし、少しでも調整している温度がずれていると、「オーバーテンパリング」や「アンダーテンパリング」といった現象につながり、仕上がりに大きく影響してしまいます。
私は、元ショコラティエとしてショコラトリーに勤務した経験や、世界的外資系ホテルでも腕を振るっていました。
さらに、全日本洋菓子コンクールのチョコレート部門で日本2位を獲得した実績があります。
この記事では、テンパリングの基本や、オーバーテンパリングやアンダーテンパリングを解説し
上記を防ぐ方法、そして失敗した際の対処法までを詳しく解説しています。
この記事を読むことで、テンパリングを理解して失敗を減らし、ツヤのある美しいチョコレートを作れるようになります。
テンパリング作業をする意味は?
テンパリングとは、溶かしたチョコレートのカカオバター温度調整し、チョコレートにとって最適な状態で固める作業のことを言います。
これにより、チョコレート特有の美しい光沢やパリッと食感、なめらかな口どけが生まれます。
チョコレートに含まれるカカオバターは、どのような温度調整で固めたかによって固まり方が変わります。
テンパリングをしないと、表面が白くなったり(ブルーム現象)、食感が悪くなったりしてしまいます。
テンパリングを行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 光沢のある見た目
→ しっかりとテンパリングして固めたチョコレートはカカオバターの結晶が整っており、光が均一に反射することで美しい光沢が出ます。 - パリッと食感
→ チョコレートを割ったときに「パキッ」と音がする、心地よい食感になります。 - 口溶けがなめらかになる
→ 体温でスッと溶ける、口当たりの良いチョコレートに仕上がります。 - ブルーム(白くなる現象)を防ぐ
→ カカオバターが均一に分散し、表面が白くなったり、品質確保につながります。 - 型抜きやコーティングがしやすくなる
→ 型からスムーズに外れ、コーティングも均一に仕上がるため、お菓子作りの作業性が向上します。
テンパリングは、チョコレートの品質を大きく左右する重要な工程です。正しく行うことで、見た目も美しく、食感も最高のチョコレートに仕上げることができます。

固まる温度が重要ではなくカカオバターの結晶がどうなっているかがチョコレートにとても重要です。
チョコレートの結晶構造の仕組み
カカオバターには I型からVI型まで6種類の結晶 が存在し、その中でV型結晶が多い状態で固まることが目的です。
チョコレートを溶かすとカカオバターの結晶構造がバラバラになってしまうためもとの安定結晶に戻します。
カカオバターの結晶の種類と特徴
結晶の種類 | 特徴 | 影響 | 溶解温度 |
I型 | 低温で形成され、非常に不安定 | ツヤなし・口どけが悪い | 17~18℃ |
II型 | 不安定で、柔らかい | ツヤが少なく、溶けやすい | 21~22℃ |
III型 | 柔らかく粗い質感 | 適温で固まるが、口どけが悪い | 25~26℃ |
IV型 | 不安定だが、少しツヤがある | 硬さが足りず、理想的ではない | 27~28℃ |
V型(理想的な結晶) | ツヤがあり、パリッとした食感 | 31~32℃で安定し、口どけが良い | 33~34℃ |
VI型 | 最も安定しているが、融点が高い | 口どけが悪く、口に残りやすい | 36~37℃ |
テンパリングは温度と結晶のコントロールが鍵
テンパリングの成功は、温度と結晶のコントロールがすべてと言っても過言ではありません。
チョコレートを扱う際には、カカオバターの結晶構造を理解し、それに合わせた温度作業をすることが重要です。
カカオバターは溶解・冷却・再加熱(水冷法やタブリール法の場合)の3段階を適切に管理することで、理想的なV型結晶を作ります。
しかし、少しでも温度が違うと、不要な結晶が残ったり、理想の結晶が十分に作られなかったりして、以下のような問題が起こります。
- 冷却温度が低すぎる → V型結晶が多くなりすぎて、結晶過多となります。(オーバーテンパリングの原因)
- 再加熱温度を上げすぎる→ 整えた結晶を崩れてしまうためとなります。(アンダーテンパリングの原因)
また、温度だけでなく、攪拌(混ぜる動作) がとても重要です。カカオバターの結晶が均一にするイメージで撹拌することで、カカバターの結晶をチョコレート全体に整えるイメージです。
正しい温度操作と適切な環境管理を行うことで、チョコレートは美しいツヤと心地よい食感を持ち、最高の状態に仕上がります。
以上がテンパリングの抑えておきたい基礎知識と作業意味です。
オーバーテンパリングとはそもそも何?
オーバーテンパリングとは、チョコレートの結晶が必要以上に増えてしまい、結晶過多の状態のことを指します。
テンパリング正しく作業をすると、V型結晶が含まれた状態になります。
しかし、テンパリング最中にチョコレートを冷却しすぎたり、作業時間が長引いたりすると、結晶が過剰に増えてしまい、オーバーテンパリングの状態となります。
オーバーテンパリングになると、チョコレートはモッタリとし、流動性が極端に悪くなります。そのため、コーティングや型流しの作業がうまくいかず、チョコレートが厚くなりすぎるなどの問題が発生します。また、口溶けも正しい結晶量のチョコレートより悪くなります。
一度オーバーテンパリングになってしまうと、急激にカカオバターの結晶化が進むため、適切な対処や再テンパリングが必要になります。
オーバーテンパリングの特徴
1. 流動性が悪くなり、作業性が悪くなる
オーバーテンパリングになると、チョコレートが必要以上に結晶化し、もったりとした質感になります。
✔ 型流しがスムーズにできない → 型に均一に流れ込まず、気泡ができやすくなります
✔ コーティングが厚くなりすぎる → 菓子の表面に薄く均一に広がらず、不恰好な仕上がりになってしまう
▶ なぜ流動性が悪いとよくないのか?
流動性が低下すると、コーティング作業で余分なチョコレートがついてしまい、厚みが出すぎるため、食感が重くなります。
特に繊細なボンボンショコラのコーティングでは、コーティングの薄さが求められるため、オーバーテンパリングになっていないか見極めが必要になります。
2. 表面が不均一に固まり、見た目が悪くなる
チョコレートの流れが悪くなることで、表面が滑らかに固まらず、コーティングのムラや気泡ができやすくなります。
✔ 滑らかでない表面 → チョコレートのツヤが損なわれ、仕上がりが美しくならない
✔ 小さな気泡が入りやすい → 仕上がりに凹凸ができ、見た目が悪くなる
3. チョコレートが通常よりも硬くなり、口どけが悪くなる
オーバーテンパリングによって過剰な結晶ができると、チョコレートが硬くなりすぎてしまいます。
✔ パリッとした食感ではなく、バキッとした硬さ
✔ 口に入れた瞬間に溶けにくく、口どけが悪くなる
▶ なぜ口どけが悪くなるのか?
結晶が増えすぎると、カカオバターが理想的な構造にならず、体温でスムーズに溶けるV型結晶よりも、より硬い結晶が多くなるため、舌の上での溶け方が悪くなります。
オーバーテンパリングが起こる原因と対策
原因1:チョコレートを冷却しすぎたり、混ぜすぎたりした場合
冷却をしすぎると、その段階で過剰な結晶が形成されてしまい、作業温度まで戻しても結晶の多い状態となります。
また、カカオバターの結晶は撹拌で広がる性質があることから混ぜすぎると、結晶が整いすぎて過剰に増えてしまうため、これもオーバーテンパリングの原因になります。
✔ 冷やしすぎると過剰な結晶が形成される
✔ 混ぜすぎると、結晶がどんどん増えてしまう
▶ 対処法①
🔹テンパリング温度を適正に保つ
→ もしフレーク法でテンパリングしている場合、水冷法やタブリール法を試してみる。
フレーク法は簡単な反面、結晶を直接加える方法なので、オーバーテンパリングが起こりやすい側面があります。


原因2:テンパリング後の作業時間が長い
テンパリングが完了した後、時間が経過するにつれて、チョコレートの中で結晶が増え続けてしまいます。その結果、作業中にどんどんチョコレートがもったりとし、オーバーテンパリングになりやすいです。
✔ 作業が長引くと結晶が増え続ける
✔ 時間が経つと流動性がさらに低下する
▶ 対処法②
🔹 チョコレートを適切に管理する
ゴムベラや作業台の縁についたチョコをこまめに取り除く
→ 縁に固まったチョコをそのまま混ぜ込むと、過剰な結晶がチョコレートに戻り、オーバーテンパリングが加速します。



縁について固まってしまったチョコレートは必ずドライヤーで溶かしてから加えるようにしましょう!
ドライヤーで適度に温めて作業温度をキープする
→ チョコレートを定期的に温めて、結晶が増えすぎるのを防ぎます。
特に作業時間が長くなる場合は、こまめに温度調整を行うことが重要。
オーバーテンパリングを防ぐために
オーバーテンパリングは作業性・仕上がり・口どけに大きな影響を与えます。正しく温度と結晶をコントロールしながら作業することで、理想的なチョコレートの状態を保つことができます。
アンダーテンパリングとは?
アンダーテンパリングとは、チョコレートのテンパリングが不十分で、理想的なV型結晶が十分に形成されていない状態を指します。
いわゆるテンパリングの失敗の多くは、このアンダーテンパリングが原因です。チョコレートを適切な温度まで冷却できていない、もしくは温めすぎてしまった場合に発生し、仕上がりのツヤや食感、硬さに悪影響を与えます。
アンダーテンパリングの特徴
1. ツヤが出ない
結晶が十分に形成されていないためチョコレート表面に美しい光沢が出ずマットで曇った見た目になる。
プロの仕上がりとは程遠く、くすんだ印象のチョコレートになってしまう。
2. 柔らかく、しっかり固まらない
チョコレートが適切に結晶化していないため、通常よりも柔らかく仕上がる。
触ると少しベタつきがあり、持ち上げたときに形が崩れやすい。
▶ なぜ柔らかくなってしまうのか?
テンパリングが正しく行われると、V型結晶がしっかりと組み合わさり、チョコレートが安定して固まる。しかし、アンダーテンパリングではこの結晶が不足し、チョコレート内のカカオバターが安定せずにバラバラな構造のまま固まってしまうため、柔らかくなりやすい。
3. 口どけが悪い
✔ 理想的なV型結晶が少ないため、溶ける感触が均一でない。
✔ ねっとりしたり、ざらつきを感じたりすることがある。
▶ なぜ口どけが悪くなるのか?
テンパリングされたチョコレートは、体温(約37℃)でスムーズに溶けるV型結晶が主体。しかし、アンダーテンパリングされたチョコレートは、不安定な結晶が混在しているため、体温での溶け方が均一でなく、ざらついたり粘り気のある口当たりになってしまう。
4. 白っぽくなる(ファットブルームの発生)
チョコレートを置いておくと、表面に白っぽいマーブル状の模様が浮き出ることがある。
これは**「ファットブルーム」**と呼ばれ、不安定なカカオバターが分離し、表面に再結晶化することで発生する。
▶ なぜファットブルームが発生するのか?
テンパリングが不十分だと、カカオバターの結晶が均一でないため、一部の油脂成分が時間とともに移動し、表面に浮き出る。これが、白っぽい模様となって現れるファットブルームの原因。
アンダーテンパリングの原因と対策
原因1:冷却不足または温めすぎによるV型結晶の不足
✔ 適切な温度まで冷却できていないと、V型結晶が十分に形成されない。
✔ 再加熱の際に温めすぎると、V型結晶が完全に溶けてしまい、不安定な状態に戻る。
▶ 対策①:適切な温度管理を徹底する
✔ テンパリングの温度を必ず確認し、適正温度を守る。
✔ 特に冷却段階を急ぎすぎたり、再加熱で温めすぎると、アンダーテンパリングになりやすいので注意。
原因2:テンパリングの手順が不十分
✔ テンパリングの工程を省略したり、適切な方法を取らなかったりすると、V型結晶が十分に形成されない。
✔ 例えば、急冷しすぎたり、結晶の数を増やす作業が足りないと、適切な結晶構造が作られずアンダーテンパリングになりやすい。
▶ 対策②:素直にテンパリングをやり直す
✔ アンダーテンパリングになってしまった場合は、テンパリングをやり直すのが最も確実な方法。
✔ 厳密には、「固まったチョコレートを1粒加える」「そのまま放置する」などの方法もあるが、上級者向けの調整方法のため、基本的にはテンパリングをやり直すのが正確かつ効率的。
アンダーテンパリングを防ぐために
✔ 冷却段階をしっかり管理し、適切な温度まで下げる
✔ 再加熱時に温めすぎない(V型結晶が完全に溶けないようにする)
✔ テンパリングの手順をしっかり守る(省略や簡易化を避ける)
✔ アンダーテンパリングになった場合は、テンパリングをやり直すのが最も確実な方法
アンダーテンパリングは、ツヤ、食感、硬さ、口どけに悪影響を及ぼし、最もよくあるテンパリングの失敗原因です。適切な温度管理と手順を守ることで、理想的なチョコレートの仕上がりを実現できます。
まとめ
テンパリングの成功には温度と結晶の管理が重要!
テンパリングは、チョコレートの光沢・食感・口どけを決める重要な工程です。
しかし、温度や作業工程を誤ると、オーバーテンパリングやアンダーテンパリングが発生し、理想的な仕上がりになりません。
- オーバーテンパリング:結晶が多くなりすぎて、流動性が低下し、作業性が悪化する。
- アンダーテンパリング:適切な結晶が不足し、ツヤがなく、柔らかく、口どけが悪くなる。
テンパリングを成功させるには、温度管理・攪拌・作業時間の適切な調整が不可欠です。
2. 補足(ポイントの強調)
✔ V型結晶を適切に作ることが成功のカギ!
✔ オーバーテンパリングは、冷やしすぎ・混ぜすぎ・作業時間の長さが原因
✔ アンダーテンパリングは、温度不足・作業手順のミスが原因
✔ 結晶のコントロールを意識し、適切な温度で作業することが大切
テンパリングを理解し、正しい手順を守ることで、プロのようなツヤと食感のあるチョコレートを作ることができます!