オーバーテンパリングとアンダーテンパリングとは?

失敗別の改善方法

テンパリングをしたときに、ツヤが出なかったり、固まらなかったり、思ったように仕上がらないことってありますよね。

特に、テンパリングの工程で失敗してしまうと、せっかくの手作りチョコが台無しになってしまうことも…。

そんな経験をしたことがある方、多いのではないでしょうか?

チョコレートのカカオバターは、温度によって異なる結晶を作り出す性質があり、その結晶をしっかり整えることにより、チョコレート本来の美しいツヤ、パリッとした食感を生み出すことができます。

テンパリングを正しく作業しないと、オーバーテンパリングやアンダーテンパリングといった失敗に繋がりやすくなります。

僕は、ショコラティエしていた経験があり、全日本のチョコレートコンクールで日本2位に輝いたこともあります。

そんな僕がこの記事では、テンパリングの基本から、オーバーテンパリングやアンダーテンパリングを防ぐ方法、そして失敗したときの対処法までを詳しくご紹介します。

この記事を読むことで、テンパリングの失敗する確率を下げることが出来ます。

テンパリングの目的と役割

テンパリングとは、溶かしたチョコレートの結晶を整えて固めることで、チョコレート特有の艶やパリッとした食感を引き出す作業です。

チョコレートの中に含まれるカカオバター(油脂分)は、温度によって固まり方や食感が違います。

その中で、安定して美しい光沢やパリッとした食感を得られるのは “V型結晶” と “VI型結晶” です。

テンパリングでは、この中でも特にV型結晶を作ることで、チョコレート特有のパリッとした食感と艶やかな見た目が実現します。

チョコレートの結晶構造の仕組み

ちょっとマニアックな話になりますが、チョコレートの中に含まれるカカオバターはそれぞれ異なる結晶を形成する性質があります。

チョコレートの口どけやツヤ、硬さに影響を与えるのは、この結晶構造です。

I型

  • 低温で形成され、非常に不安定。
  • 溶けやすく、ツヤがない。
  • 口どけが悪い。

II型

  • 結晶構造が不安定。
  • 柔らかく、ツヤも少ない。
  • 温度が少し高い環境で溶ける。

III型

  • 結晶構造が不安定。
  • 柔らかく、粗い質感を持つ。
  • 適温で固まるが、溶けやすい。

IV

  • 結晶構造が不安定。
  • 理想的ではない。
  • 柔らかく、ツヤも少しあるが、適度な硬さがない。

V型←理想的な結晶

  • 最も望ましい結晶構造で、テンパリングはこの結晶を作ることを目的にしている。
  • 美しいツヤがあり、適度な硬さとシャープな割れ方をする。
  • 体温で溶けやすく、口どけが非常に良い。
  • 31~32℃で安定し、最も理想的な状態。

VI型

  • 非常に安定した形だが、融点が少し高い
  • 口溶けがV型より悪いため口に残りやすい

Ⅰ型〜Ⅳ型の結晶の状態で固まってしまうのがアンダーテンパリング、

Ⅴ型が必要以上にできてしまうのがオーバーテンパリングです。

テンパリングでの温度管理(ダークチョコレートの場合)

  • チョコレートを45~50℃まで一旦加熱して全ての結晶を溶かす。
  • その後、27~28℃まで冷却し、安定した結晶(ベータ結晶)が形成されるように促す。
  • 最後に、31~32℃に再加熱して、余分な不安定結晶が溶け、理想的な結晶のみが残る。

この一連の温度操作により、チョコレートが理想的な結晶構造を持ち、品質が保たれます。

オーバーテンパリングとは?

オーバーテンパリング現象

オーバーテンパリングとはチョコレートの結晶が必要以上にできてしまいチョコレートに悪い影響を与えてしまう現象です。

チョコレートがモッタリしていて作業性が極端に悪くなります。

また一度オーバーテンパリングになってしてしまうとチョコレートが急に結晶化が進んでしまうため対策が必要です。

オーバーテンパリングの特徴

モッタリとした流動性になる

チョコレートが必要以上に結晶化しているため、作業中にチョコレートがもったりしてしまい、流動性が低くなります。型に流し込む作業やコーティング作業がスムーズに進まなくなります。

また流動性が低い為、チョコレートが必要以上に、厚くコーティングされてしまうため、食感が悪くなります。

表面が不均一に固まる

チョコレートの表面が不均一に固まり、滑らかでない表面や気泡ができやすくなることがあります。これにより、見た目の美しさが損なわれることがあります。

チョコレート硬さが増す

過度な結晶化により、チョコレートが通常よりも硬くなり、食感が重く感じられることがあります。これにより、口どけが悪く、しっかりとした滑らかさが損なわれる場合があります。

オーバーテンパリングが起こる原因と対策

オーバーテンパリングが起こる原因は主に2つあります。

原因1:チョコレートを必要以上に冷却しすぎたり、混ぜすぎたりした場合

チョコレートを冷やしすぎた場合にその段階で結晶がたくさんできてしまうため
作業温度まで温めても結晶が多い状態になります。
また必要以上に混ぜてしまう場合にも、整った結晶がたくさんできてしますためオーバーテンパリングになりやすいです。

オーバーテンパリングの対処法①

この場合の対策法はまずはテンパリングの温度が適正であったかどうかを確認しましょう!

もしフレーク法でテンパリングをしている場合は水冷法かタブリール法でテンパリングをしてみましょう!

フレーク法は簡単ですが、結晶化したチョコレート入れてテンパリングをしてテンパリングをしている特性上、オーバーテンパリングしやすくなるというデメリットもあります。

原因2:テンパリング後の作業が長くなる

テンパリング後の作業が長くなるとだんだんオーバーテンパリング(チョコレートがモッタリ)してきます。

時間が経つにつれてチョコレートの中の結晶が増えて行くため、必要量より多くなってしまうためです。

オーバーテンパリングの対処法②


この場合の対策はチョコレートが縁につかないように綺麗に作業する。
また定期的にチョコレートをドライヤーで温めるなどして結晶を崩してあげる作業が必要です。


チョコレートが縁やゴムベラにいた状態で冷えて固まってしまったものをチョコの中に混ぜ込んでしまうとオーバーテンパリングを起こしてしまします。


もし縁やゴムベラについたチョコレートが固まってしまったら混ぜ込まずにむしろ取り除いて作業する方がチョコレートが状態よく作業できます!


ドライヤーなどを部分的に温めて結晶を壊してからなら混ぜ込むと良いでしょう!

アンダーテンパリングとは?

アンダーテンパリング現象

チョコレートをテンパリングする際に、温度や手順が不十分で、理想的な結晶ができていない状態です。

いわゆるテンパリングの失敗のほとんどはこれにあたります。

具体的には、チョコレート適切な温度まで冷やされていない事が殆どです。

アンダーテンパリングの特徴

アンダーテンパリング以下のような特徴があります。

ツヤが出ない

結晶が十分に形成されないため、チョコレート表面に美しい光沢が出ず、マットで曇った見た目になることが多いです。

柔らかい

チョコレートがしっかり固まらず、柔らかいままの状態になります。

触ると少しベタついています。

口どけが悪い

アンダーテンパリングされたチョコレートは、理想的なV型結晶が少ないため、口の中で溶ける感触が滑らかでなく、ねっとりしたり、ざらつきを感じることがあります

チョコレートが白っぽくなる(ブルーム現象)アンダーテンパリングによって、不安定な結晶が再結晶化し、時間が経つとチョコレートの表面に白っぽいマーブル状のものが現れることがあります。これをファットブルームといい、カカオバターが分離し表面に浮き出る現象です。

アンダーテンパリングの原因と対策

アンダーテンパリングが起こる主な原因は、温度管理の失敗です。具体的には

チョコレートを適切な温度まで冷やしきれなかった為に安定した結晶が不足した結果、アンダーテンパリングが起こります。

アンダーテンパリングにならないためには

素直にテンパリングをやり直す

アンダーテンパリングになってしまった(テンパリングができていない)場合
素直にテンパリングをやり直すことをお勧めします。

厳密には固まったチョコレートを1粒加えて混ぜる、そのまま放置する等手段がないわけではないがかなり上級者向けの方法になるためやり直したほうが早いし正確です。

適正な温度確認する

チョコレートのテンパリング温度を確認しましょう。

その上できっちり温度を計ってテンパリングをすると格段に失敗が減らせます。

特に、冷却段階を急ぎすぎたり、再加熱の際に温め過ぎると、アンダーテンパになりやすいです

まとめ

チョコレートのテンパリングは、美しいツヤとパリッとした食感を生み出すための重要な工程です。成功するためには、カカオバターの結晶構造をしっかり理解し、適切な温度管理と作業が求められます。特に、理想的なV型結晶を形成することが、最高の仕上がりを実現するポイントです。

オーバーテンパリングは、チョコレートが必要以上に結晶化してしまい、作業性や仕上がりに悪影響を及ぼします。チョコレートがもったりしてツヤを失い、硬くなりすぎることがありますが、温度管理や作業時間に気をつけることで防ぐことが可能です。

一方、アンダーテンパリングは、結晶化が不十分な状態で、チョコレートにツヤが出なかったり、ベタついたりする失敗の原因となります。

冷却や加熱の温度が適切でない場合に起こりやすいですが、再加熱してテンパリングをやり直すことで修正できます。

テンパリングを成功させるには、基本的な工程を正しく理解し、温度を正確に管理することが大切です。オーバーやアンダーテンパリングを避けるためには、工程中の細かな注意が必要で、もし失敗しても、修正するための方法を知っていれば心配はありません。実際の作業では、失敗を恐れずに挑戦し、経験を重ねることで技術が向上していきます。

このように、テンパリングの基本をしっかり押さえ、適切な方法で作業することで、家庭でもプロフェッショナルのような仕上がりのチョコレートを作ることができるでしょう。