「チョコレートに白っぽい粉がついている…もしかしてカビ?」と思ったことはありませんか?
実はその白い模様は「ブルーム」と呼ばれる現象で、カカオバターや砂糖が表面に浮き出たものです。カビではないので食べても安全ですが、テクスチャーや風味が損なわれるため、避けたい現象です。
私はショコラティエとしてショコラトリーで勤務し、全日本チョコレートコンクールで日本2位を受賞した経験があります。その中でブルーム現象に悩まされたことも多々ありました。この記事では特に「ファットブルーム」に焦点を当て、その原因や防ぎ方、発生してしまった場合の対処法を詳しく解説します。
ファットブルームとは?
ブルームには大きく分けて以下の2種類があります。
ファットブルーム
カカオバター(脂肪分)が原因で発生します。
表面に白っぽい地層のような模様現れ、ボロボロと簡単に砕けてしまします。
シュガーブルーム
糖分が原因で発生します。
表面に白い斑点が現れ、湿度の高い環境で保存すると起こりやすいです。
今回は、リカバリーが可能な『ファットブルーム』に絞って解説します。
ファットブルームの主な原因
温度変化による影響
チョコレートが高温になった後、急激に冷えることでカカオバターが表面に浮き出て固まります。この現象は、特に夏場に常温での保存や保存環境温度が一定でない場合におきます。
カカオバターの安定結晶不足(アンダーテンパリング)
テンパリングは、カカオバターの結晶を整え、チョコレートを滑らかでツヤのある仕上がりにする重要な工程です。カカオバターの安定結晶が不十分(アンダーテンパリング状態)だと、固まるまでにカカオバターが浮き出てしまいます。
チョコレートの固まるまでの時間が長い
チョコレートが固まるまでに時間がかかると、カカオバターの結晶が不安定になり、結果としてファットブルームが起こります。
室温が高い場所でチョコレートを固めようとしたり、チョコレートを厚く流しすぎた場合にも起こりやすいです。
通常テンパリングを取れたチョコレートは、常温で5分〜10分程度で固まりますが、室温が高い場合チョコレートが固まりません。
チョコレートが固まらないとカカオバターの安定結晶が崩れてしまいテンパリングが外れた状態になります。
またチョコレートを厚く流した場合にも真ん中に熱がこもり中々固まらないことから中心でブルームが起きてしまします。
そのためチョコレート1cm以上の厚さに流す場合は注意が必要です。
ファットブルームの防ぎ方
適切な保存環境で保存する
チョコレート(クーベルチュール)の保存温度は15~20℃、湿度は60%以下なおかつ急激な温度変化がない場所が理想的です。
上記温度での保存が難しい場合(自宅ではほとんど不可能のなので)直射日光の当たらない涼しい場所や、密閉容器を使って冷蔵庫の野菜室で保存することをおすすめします。
※プロの場合ワインセラーやクーラーの効いた部屋で保存しています。
テンパリングを丁寧に行う
テンパリングが正確に行われていれば、ファットブルームの発生を抑えることができます。特に自宅で作業する際は、作業場所の室温(22~25℃)や湿度を整えた上で丁寧に行いましょう。
厚く流す際は注意が必要
チョコレートを型に流し込む際、厚く流す際は素早く固められるように5分ほど冷蔵庫に入れましょう。
ファットブルームが起きてしまったら?
ファットブルームが発生してしまった場合、以下の対処法があります。
- 再テンパリングを行う
一度溶かして再びテンパリングすることで、表面をツヤのある状態に戻せます。ただし、長期間ブルームヶ起きた状態で放置されたチョコレートは風味gああ落ちている場合があります。 - 加工品に使用する
そのまま食べると見た目や食感が気になる場合、ブラウニーやムース、ガトーショコラなどの焼き菓子に活用するのがおすすめです。
よくある質問(Q&A)
Q. ファットブルームができたチョコレートは食べても大丈夫?
A. 食べても健康に問題はありません。ただし風味や食感が劣化していることがあるので、そのまま食べるよりも加工して使う方がおいしく楽しめます。
Q. 保存場所は常温がいいですか?それとも冷蔵庫?
A. 温度が安定している環境がベストです。常温でも冬場の暖房のつけない部屋など15~20℃の涼しい場所であれば問題ありませんが、夏場など気温が高い時期は密閉容器に入れて冷蔵庫(野菜室)で保存するのがおすすめです。
まとめ
ファットブルームは、チョコレートの表面に現れる白い模様で、見た目や食感に影響を及ぼします。その原因は、温度変化やテンパリング不足、固まるまでの時間の長期化などです。
防止ポイントは以下の3つ:
- 温度と湿度を一定に保つ保存環境を整える。
- テンパリングを正確に行う。
- 厚みを均一にし、効率よく固める。
これらを実践することで、大切なチョコレートの品質を守ることができます。もしファットブルームができてしまっても再利用する方法はあるので、ぜひ参考にしてください。